Artichaut(アーティチョーク:Artichoke)

この時期、ここ「森美」を訪れる方のうち、10人のうち3人くらいに「これはなんですか?」と尋ねられるこの植物。

背丈が1.5Mくらいあって畑の中でも異彩を放っている。
名前はアーティショー : Artichaut(アーティーチョーク)和名はチョウセンアザミ。でっかいアザミだ。

パリに住んでいた20代の頃、Artichaut(アーティショー)は最もハマった「食材」だった。

当時モンマルトルの丘の裏、18区に住んでいた。

18世紀に建てられたアパートの5階(もちろんエレベーターなんてない)が住居。水を運ぶのさえひと苦労だった。

アラブ人や移民が多く住む地区で、治安も悪く(という風評のせいか)日本人を見た事がなかった。

さて、この変わった食材(アーティチョーク)を食べたのは、たまに寄る、近所の市場の「総菜屋の姉さん」から勧められたのがきっかけだった。

学生だった当時、とにかくお金がなかった。

もちろん自炊を基本としていたが、安い食材を買い回る市場のなか、どうにもウマそうに見える総菜屋があった。
入口にはチキンのグリルがぐるぐると回っていて、ただでさえ空腹の日々だ。なるべく近寄らないようにしていた。

きっかけはこの総菜屋の売り子の姉さん。

フランス人ぽくない眉毛と黒い瞳の、威勢の良い美人さんで、お金がなく、買うつもりもないのにチキンのグリルを物欲しげに眺めていたからか、はたまた市場の通路が狭いこともあってなのか、目が合う度、次第にちょこちょこと会話を交わすようになった。

「あんた学生?中国人?」
「や、日本人。」
「ふーん。初めてかも。日本人。」
「そうなん?」
「・・・」

当時は美術学校の学生で、ようやく見つけたアルバイトは明け方4時半から〜パリ市内のスーパーの搬入口、日本食材の補充・陳列の仕事だった。

ある月末のこと、アルバイト代をもらって、ちょっと気分もあがり気味。

コーヒー豆屋でケニア(エチオピア)を好みの引き方(Level5~6)で挽いてもらった。
(↑これまた「スペシャルティ」だの「自家焙煎」があたりまえの昨今の日本では信じがたいけど、当時のパリでは自家焙煎のコーヒー豆、しかもアフリカ産は特にめちゃ安だった。)

コーヒー豆を受け取って、ふと振り返ると、ショーケースに並ぶ豆の煮物のジュレやらキッシュやらパテといった食材のなかに見慣れないものを見つけた。こぶし大のでっかい「花」?のような?

僕「これ、何?」
姐さん「Artichaut(アーティショー)」
僕「Il est comment? 美味いの?」
姐さん「チョー美味い! Délicieux!」
僕「じゃ一個」

生まれて初めて食べたその野菜?花?初めてだけど美味い!

それ以来、1個130円くらいと値段も安かった事もあって、ちょこちょこアーティショーを買って食べていた。
姐さんもそのうち顔を見る度「1個?」と尋ねるようになった。(1個しか買った事がない)

=このアーティショー、蕾を茹でて食べるのだが、メインは軸。そこに辿り着くまで葉っぱを剥がしながら、葉っぱの根元をオリーブオイルとレモンと塩とブラックペッパーを混ぜたソースにちょんちょんとつけて、歯でしごきながら食べる。食感はそら豆に近いかも。ボルドー(赤ワイン)にしこたま合う。

この世で一番好きな食べ物は何か?と問われたら「Artichaut(アーティショー)」と答える。


今、ここ杵築でアーティショー。

アーティチョーク

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