戦後から昭和30年代にかけて、食糧不足と燃料不足の時代に「愛農かまど」は生まれました。
当時、農村家庭では煮炊きなど生活に必要な燃料は薪で行われており、日本の森林資源が減少、枯渇する危機にあったそうです。
そんな中、愛農会創始者の小谷純一氏の呼びかけに応じて、料理研究家の酒井章平氏が考案した、少ない薪で左右二つの釜を同時に使って調理ができる、熱効率が非常に良いかまど。
それが「愛農かまど」です。
これまでにない画期的なかまどは多くの農村に普及していきました。
しかし、昭和30年代中ごろになり農村にもプロパンガスが普及するようになってからはその存在は次第に忘れ去られていきました。
ほとんど途絶えていた「愛農かまど」でしたが、2004年、私たちの師匠でもある野呂由彦さんが技術と(奇跡的に残っていた)木型を継承され、今に至ります。
時代は変わり現代、便利になったはずの私たちの暮らしや身体は自然から遠のくばかり。
「何かが違う」と感じた9年前、福岡市から大分県国東半島へ、そして、現在の築100年超の古民家に移住。
田舎暮らしの知識も経験も知り合いも、お金も、、文字通り何もないところに「愛農かまど」をひとつ設置したところから私たちの里山暮らしが始まりました。
人と自然と共生して暮らす。薪に火をくべ、煮炊きする。ちょっとの手間を共有して笑顔で食卓を囲む。
小さな集まりのきっかけ。ささやかで、丁寧だけれど、けっして特別でないもの。
そんな希望の暮らしを「愛農かまど」に感じていました。
あの時感じた希望の暮らし、は私たちにとって、いつの間にかとても身近なものになっています。
ご縁をいただき、現在では「愛農かまど伝承者」としても活動しています。