森美カフェの床はジビエです。
外の小屋を解体〜再生している間に、内装は床をどうするか思案していました。
カーペットを外したあとは、目地の粗いベニヤがむき出しです。
当初の案は「足場板を敷き詰める」でした。
厚さ36mmの工事現場で使用する足場板を敷き詰めようと考えていました。
テーブルも足場板を利用したラスティック仕様にしたい。
で、置いてみる。現場確認が一番。
ふむふむ、床に表情が出て、これはこれでおもしろい。
しかし、意外と広い床面(横約5.8M×縦4M)で、足場板を購入〜加工するとなるとそれなりに金額もかかります。
なにより、極力コストは抑えたい。それにただでさえ低い天井が、さらに低くなるのも避けたかったのです。
散々悩んだあげく、「塗ろう」と。
目地の粗さはパテで埋めて表面に絵を描く事にしました。(これが後日とんでもない事になるのですが、この時はまだわかりません。)
広い面に色を塗る時は下地を塗ってから色を乗せるのですが、コツは下地の色を真っ白で塗らない事。
下地を薄いグレーで塗る事で、下地の色を拾う事なく、最表面の色がムラなく、発色良く塗る事ができます。
↑これは以前、ショーウィンドウのディスプレイデザインを生業にしていた頃、施工でお世話になった職人さんに教わりました。
このときのショーウィンドウ。壁面はプリントではなく、『絵』です。
昔、映画の看板を描いていたという、高齢の絵描きさんに現場で描いてもらいました。
狭く暑い、ショーウィンドウの壁面は後ろに下がって全体像を確認する事もできず、いちいち外に出なければならないし、垂直の壁で水が使えません(垂れてしまう)。
どうするのかドキドキしながら現場管理していると、絵描きさんは、左手に塗料(アクリル絵の具)を、右手には大きな筆(刷毛)2本を手に持って、色を乗せつつフチをぼかす。
「金魚は泳いどるように描かんとな」
の言葉が今も忘れられません。真っ白な壁面に、みるみるうちに川が流れ、魚(鯉です^^;)が泳ぎます。
めちゃくちゃ格好良かったです。
現場が終わるとそのまま別れてしまい、その後お会いする機会を失ってしまった事が悔やまれます。
このショーウィンドウはその年のディスプレイ賞を受賞しました。
ちょっとは恩返しができたかな。